#analog

*結核菌CYPとリガンドとの特異的相互作用の解析、結核の新規治療薬の提案 [#ic42388f]

**Cytochrome P450(CYP)と結核との関連[#m245e329]

 Cytochrome P450(CYP)は、酵素ファミリーの総称であり、活性部位にHEMEを持つ。結核菌は20種類のCYPを持っており、近年、結核の流行が世界中で問題となり、CYPの機能を効果的に阻害し、結核菌の働きを抑える化合物の開発が、重要な研究課題となっている。

**研究目的 [#m245e329]
 &color(red){''本研究では、高精度分子シミュレーション手法を用いて、CYPと様々なリガンド間の結合特性を解析し、CYPにより強く結合するリガンドを提案することを目的とする。''};

 まず、CYPの一種であるCYP130を研究対象とし、CYP130と強く結合することが分かっている抗結核薬econazoleとCYP130間の特異的相互作用を解析する。CYP130は、人に感染しないウシ型結核菌に存在しないことから、人がホストとなる感染や増殖に重要な役割がある可能性があるとされている。また、econazoleなどのアゾール系抗菌薬は、HEMEの鉄イオンと配位結合を形成(下図)し、CYPの機能を阻害することが分かっており、CYP130とeconazoleが強く結合する原因を、分子シミュレーションにより明らかにできれば、その結果を活かして、CYP130に対する新規の阻害剤を提案でき、結核の新規治療薬の提案につながる。

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CENTER:&attachref(CYP130_1.png,nolink);
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CENTER:&attachref(CYP130_2.png,nolink);
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*分子シミュレーションによるDNA遺伝情報の転写制御機構の解明 [#ic42388f]

**分子生物学におけるセントラルドグマ [#m245e329]

 遺伝情報は、DNA から RNA へ転写(コピー)され、さらに、RNA の情報が翻訳(情報の変換)されることにより、タンパク質が合成される(下図)。
タンパク質は、生物の基本ユニットである20種類のアミノ酸がペプチド結合により鎖状につながった生体高分子であり、生体内で生命維持のために必須な機能を果たしている。

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CENTER:&attachref(protein1.png,nolink);
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**ラクトースリプレッサーの機能 [#icda528c]
 転写制御タンパク質であるラクトースリプレッサー(LacR)は、[[リガンド*>#ligand]]依存型タンパク質であり、結合するリガンドの種類に依存して DNA の転写を抑制あるいは促進する。下図に示すように、LacRにリガンドONPFが結合すると、LacRが2量体を形成し、それがDNAの重要な塩基配列部位に特異的に結合し、DNAの遺伝情報が転写され、タンパク質が生成される機構を抑制することが、実験で分かっている。しかし、小さなONPFの影響でLacRとDNA間の結合特性が大きく変化する原因は不明である。また、リガンドの種類が変わると、LacRとDNA間の結合が弱まり、LacRがDNAから離れることも分かっているが、その原因は全く不明である。

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CENTER:&attachref(1EFA.gif,nolink,20,20);
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&size(12){&aname(ligand);リガンド*: タンパク質に結合することにより、タンパク質の性質や機能を変化させる低分子。};

**研究目的 [#m245e329]
 &color(red){''本研究室では、転写機構を制御する様々なタンパク質の特性を解析し、生命現象の根本となる転写機構が、これらのタンパク質によりどのように制御されるかを解明したいと考えている。''};

 まず、リガンドの結合により LacRとDNAの複合体の安定構造と電子状態がどのように変化するかを、古典分子力学計算、及び'''ab initio'''分子軌道計算により解析し、リガンド結合により LacR と DNA の結合が変化する原因を解明したいと考えている。また、別の転写制御タンパク質であるCAPに関しても、同様のシミュレーションを実行し、LacRとの特性の違いを明らかにする。

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*アルツハイマー病の発現機構に関する研究 [#h324bce7]

**アルツハイマー病とアミロイドβタンパク質 [#f9a28138]

 アルツハイマー病は、認知症の中で最も多い症状である。アルツハイマー病の発症には、脳内でのアミロイドβタンパク質(Aβ)の凝集が関係している。凝集したAβは、神経細胞に対して強い毒性を持ち、細胞死を引き起こす。それによって、アルツハイマー病が発症すると考えられている。そのため、Aβの凝集を抑制する化合物は、アルツハイマー病の治療薬として有用である。

 多くの実験により、下図に示すAβ凝集体の構造が提案され、Aβの凝集を抑制する化合物が合成されている。しかし、Aβの凝集機構、及び化合物がAβの凝集を抑制する機構は、未解明であり、新規の抑制剤の開発のボトルネックになっている。

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CENTER:&attachref(amyloid_beta.png,nolink);
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**アミロイド前駆体タンパク質とクルクミン [#f9a28138]
Aβは、gamma-secretaseによりアミロイド前駆体タンパク質(APP)から生成される。そのため、クルクミンとの特異的相互作用を解析し、APPに強く結合することでAβの生成を抑制する。gamma-secretaseを阻害すると、副作用が発生してしまう問題もない。
Aβは、gamma-secretaseによりアミロイド前駆体タンパク質(APP)から生成される。そのため、クルクミンとの特異的相互作用を解析し、APPに強く結合することでAβの生成を抑制する新規阻害剤の提案を行っている。gamma-secretaseを阻害すると、他の重要なタンパク質の分解も出来なくなってしまうため、副作用が発生する。しかし、APPに強く結合することで、gamma-secretaseによる分解を防ぐため、副作用が起きる問題がない。

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CENTER:&attachref(3.PNG,nolink);

**研究目的 [#za48400a]
 
 &COLOR(red){''本研究室では、Aβとその凝集を抑制する様々な化合物との特異的相互作用を分子シミュレーション手法を用いて解析し、より効果的にAβの凝集を抑制する新規のリガンドを、実験に先駆けて設計することを目的としている。''};

 これまでに、健康食品のウコンに含まれるクルクミンをベースにした新規の抑制剤を提案した。さらに、Aβの5量体、6量体などの凝集体の安定構造を解析し、これらの凝集体の形成にどのような相互作用が重要であるかを、原子・電子レベルでは明らかにしようとしている。その結果を基に、Aβの凝集を抑制する新規のリガンドを提案したいと考えている。

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*細胞骨格タンパク質FtsZと阻害剤間の結合特性の解析[#ed1ca0aa]

**細胞骨格タンパク質FtsZの役割 [#c159e123]

 細菌が細胞分裂を行うためには細胞骨格タンパク質FtsZ(Filamenting temperaturesensitive mutant Z)が必要不可欠である. FtsZは真正細菌やユーリ古細菌などに存在し,細胞分裂時に隔壁を形成する役割がある. FtsZ は細菌の細胞内に存在し, Minファミリーという一連のタンパク質によって細胞分裂を制御される. 細胞が十分に成長すると, FtsZが成長した細胞の中心にZリングと呼ばれる環を形成し, その環が収縮することで細胞が引き締められ分裂する. このためFtsZ阻害剤は細菌の持つFtsZの活性を阻害し,細菌の増殖を抑えることが可能となる.また,異なる種のFtsZ間のアミノ酸配列のホモロジーは35~99%異なっているため,対象を結核菌のFtsZとした阻害剤では結核菌以外には効果がなく,副作用が起きない利点がある.

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CENTER:&attachref(FtsZ_1.png,nolink,50%);
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CENTER:&attachref(FtsZ_2.png,nolink,50%);
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**研究目的 [#zfe6cbef]
 &COLOR(red){''本研究室では、結核菌FtsZと阻害剤との特異的相互作用の解明を目的とし、FtsZの立体構造、FtsZと阻害剤の複合体構造を決定し、その構造に対し電子状態解析を行っている。''};

 結核菌FtsZと阻害剤の特異的な相互作用を明らかにすることで、薬剤耐性の持ちやすい結核菌に対して、新規の抗結核剤を提案することが可能となる。

*HIVの逆転写酵素RT とリガンドの特性解析 [#n8413aa0] 
 研究対象と目的
-HIVはエイズを引き起こす原因である。
-RTとはHIVを増殖させる役割をもつウイルス特有の酵素である。
-HIVは変異ウイルスの集団であり薬剤耐性を持つものが多い。

 下図のように、HIV内のRNAとRTが細胞に入り、HIVのRNAからDNAを作成する。HIVのDNAがヒトのもつDNAに組み込まれてHIV構成に必要なタンパク質を作成しこれが集まり新しいHIVが生まれる。
CENTER:&attachref(HIV_RT.png,nolink,40%);


 &COLOR(red){''本研究室では、RTとリガンドの特異的相互作用を量子力学に基づく分子シミュレーションを用いて解析を行い、RTに対してより阻害率の高い新規阻害剤を提案する。''};

*芳香族炭化水素受容体AhRとリガンドとの特異的相互作用の解析 [#ed1ca0aa]

**芳香族炭化水素受容体AhRの役割 [#c159e123]
 生体には異物・薬物を代謝および解毒する防御機構が備わっている。その機構に関わっているタンパク質として芳香族炭化水素受容体AhRと呼ばれる転写調節因子があり、代謝制御機構を制御している。
 AhRの主なリガンドは、外来性リガンド、内在性リガンドの2つに分けることができる。外来性リガンドは、環境汚染などにより発生した環境ホルモンなどが挙げられる。その中でも発がん性物質ともされるダイオキシン類は非常に怖い存在であり、AhRによる代謝機構の解明が毒性の対策に重要なポイントとなっている。また、内在性リガンドは体内で生成されるリガンドである。

**免疫系の機構解明 [#l6368e4f]
 AhRに結合するリガンドが変化することが、細胞分化に影響があるということも最近の研究結果から明らかになっている。ここで細胞分化の方向性が、外来性リガンドと内在性リガンドの違いによって変わることも明らかになっているが、その分化誘導の変化がどのようにリガンドの違いと関わっているかは明らかになっていない。

**研究目的 [#zfe6cbef]
 &COLOR(red){''本研究室では、AhRとリガンドとの特異的相互作用の解明を目的とし、AhRの立体構造、AhRとリガンドの複合体構造を決定し、その構造に対し電子状態解析を行っている。 ''};

 AhRと外来性リガンド、内在性リガンドの特異的な相互作用を明らかにすることで、転写機構の解明、更に自己免疫疾患やアレルギーなどの免疫疾患の新しい治療薬の開発に繋がると考えている。

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CENTER:&attachref(AhR4.png,nolink);
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*サーモライシンとその阻害剤間の特異的相互作用の解析 [#baadf21f]

**サーモライシン (TLN) とは [#k82dba5e]

 TLN は、世界で最初に報告された Bacillus stearothermophilus 由来の金属プロテアーゼである。活性部位に 1 つの亜鉛イオン、構造内に 4 つのカルシウムイオンを持ち、それらのイオンが TLN の機能と構造の維持に重要な役割を果たしている。

**TLN 研究の意義と本研究の目的 [#xbec762a]
 TLN は人工甘味料の合成に必須の酵素であり、TLN の阻害剤は高血圧、心筋梗塞、糖尿病性腎症などの治療薬として利用できる。そのため、TLN によって引き起こされる加水分解反応の機構や、阻害剤による TLN の活性阻害の機構などは、これまで広く研究されている。

 &COLOR(red){''本研究室では、TLN とその機能を阻害する様々なリガンドとの特異的相互作用を分子シミュレーション手法を用いて解析し、より阻害剤として機能する新規のリガンドを、実験に先駆けて設計することを目的としている。''};

&br;
CENTER:&attachref(TLN_0.png);
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*核内受容体 PPAR とリガンドの特性解析 [#n8413aa0] 
 PPARとは
-核内受容体 PPARは、脂肪代謝や糖代謝の調節に重要な役割を担っているタンパク質である。
-糖尿病などの生活習慣病、癌、炎症性疾患、動脈硬化症など多くの病気に関与する。
-代謝異常に基づく病気の治療薬を開発する際、研究対象として注目されている。

 下図のように、PPARにリガンド分子(GW409544)が特異的に結合すると、この複合体がDNAに特異的に結合し、生体内での脂質の生成を低下させる。

CENTER:&attachref(protein2.PNG,nolink);

 &COLOR(red){''本研究室では、PPARとリガンドの特異的相互作用を量子力学に基づく分子シミュレーションを用い、解析している。''};




*タンパク質中におけるATPの加水分解反応の解析 [#u80d3fc5]

 人間は老化と共に様々な身体機能が衰える。これはすべての人が避けようの無い現実である。特に、体内のエネルギー代謝の衰えは、慢性的な体調不良を引き起こし、様々な疾患の原因となる。タンパク質によるエネルギー代謝反応の多くは、ATP(アデノシン三リン酸)の加水分解反応によるエネルギーを利用しており、ATP は生命活動の維持に欠くことができない。だが、タンパク質中におけるATPの加水分解反応は完全には解明されていない。

CENTER:&attachref(atp.PNG,nolink);

 &COLOR(red){''本研究室では、タンパク質中のATPの加水分解反応を分子シミュレーション手法により詳しく解析し(([[“密度汎関数法によるATP、ADP、AMP、GTP及びMg2+との複合体の電子状態解析”>doi:10.2751/jcac.7.178]]、高橋聖和、栗田典之、J. Comput. Aided Chem.、2006、7、178-189.))、より加水分解の能力を高めた新たなタンパク質の設計を目指している。''};

//CENTER:&attachref(,nolink);

// &COLOR(red){''''};


*分子シミュレーションによる単一リポソームの構造解析 [#h31467f7]

 リポソームとは脂質二重層膜から構成される小胞体である。小胞の内側は親水性の膜で覆われており、内部に様々な分子を封入することができる。また、その特徴として生体適合性に優れていることや、水溶性や脂溶性の薬物を容易に封入できることなどが挙げられる。近年、これらの特性を生かした研究が注目されており、薬剤輸送システム(DDS)のキャリアーとしての利用や、修飾子を付加することによって特定の物質を吸着する(スカベンジャー)効果が報告されている。しかし、分子シミュレーション分野においてリポソームの特性解析は粗視化構造を主体としており、全原子構造による解析は進んでいない。

CENTER:&attachref(Liposome_o-yo.PNG,nolink,80%);
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CENTER:&attachref(Liposome_aftmd.PNG,nolink,80%);

&COLOR(red){'' 本研究室では初期構造を球として様々なサイズのリポソームの粗視化計算を行い、その計算結果を元に全原子リポソームを作成し、特性変化を原子・電子レベルで明らかにすることを目標としている。''};
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*京コンピュータを用いたFMO計算による核内受容体とリガンド間の結合特性解析 [#ed1ca0aa]

**FMO創薬コンソーシアム [#c159e123]

 2014年11月、スーパーコンピュータ「京」を用いたFMO計算に基づくインシリコ創薬手法を実用的な技術として発展させる目的で、FMO創薬(FMO Drug Design:FMODD)コンソーシアムが設立された。FMODDの主な目標は、FMO計算で算出した相互作用エネルギー (Interaction Energy : IE) に基づき、リガンドの階層的な分類や大規模なデータベースの作成を行い、今後の創薬研究に貢献することである。2015年12月現在、大学、国立研究所のみでなく、多くの製薬企業、情報系企業が参画し、FMO計算を進めている。
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 本研究室は、核内受容体タンパク質をターゲットとするグループのリーダーとして、FMODDコンソーシアムに参画しており、現在、アンドロゲン受容体タンパク質(AR)、及びARに対する様々なリガンドを対象に計算を進めている。

**アンドロゲン受容体(AR) [#c159e123]
 ARは核内受容体の一種であり、そのリガンド結合ドメイン(LBD)に、男性ホルモン(リガンド)が結合することでコアクチベーターが誘引され、DNAの転写を発現する。例えば、前立腺がんの進行はARとリガンドの結合、及びそれに伴うARとコアクチベーターの結合が関与するため、がんの抑制にはARによる転写発現機構の阻害が必要である。
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&br;
CENTER:&attachref(ARの活性.png,nolink,80%);
&br;


**研究目的 [#zfe6cbef]
 &COLOR(red){'' 本研究では、AR+リガンド+コファクター複合体構造に対して、京コンピュータを用いたFMO計算によりARとリガンド間、及びARとコファクター間の結合特性を電子レベルで解析し、その結果をFMODDコンソーシアムにおけるデータベースに登録する。''};

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// 西川真 2007/12/11
// 全体的に作業中
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