研究紹介/がん

がん浸潤機構の解析

がん浸潤機構について

 がん細胞は、タンパク質分解酵素を産生し、細胞外マトリックス(ECM)等の周辺組織を破壊・浸潤し、血管に侵入し、標的臓器へ移動・転移する。よって、がん細胞の浸潤を抑える事ができれば、がん転移を抑える事ができる。 がん細胞の浸潤には、複数のタンパク質分解酵素が関与し、ECM の分解、接着を繰り返す事で浸潤が進行する。

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がん浸潤機構のシミュレーションモデルの開発

 がん浸潤機構を解明するため、がん浸潤機構の細胞シミュレーションモデル(下図)を開発している*1

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 本研究室では、開発したモデルを基に、どのタンパク質分解酵素が、がん浸潤に重要であるかを明らかにし、より効果的ながん治療の方法を提案したいと考えている。

 

がん転移抑制剤とその受容体との特異的相互作用の解析

がん浸潤のトリガーとなるタンパク質

がん浸潤機構の解析により、様々なタンパク質分解酵素の中で urokinase-type plasminogen activator (uPA) とがん細胞表面上の uPA receptor (uPAR) の結合がトリガーとなり、がん浸潤が引き起こされることが明らかになった。

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現状のがん転移抑制剤の問題点

がん転移の治療としてがん転移抑制剤の投与がある。しかし、治療を受けるがん患者の体力は低下しており、副作用の強い薬物を投与することは困難である。また、現在のがん転移抑制剤は注射剤であり、がん患者の多くは通院することを余儀なくされている。

がん患者の負担を軽減させるため、副作用の少なく内服可能ながん転移抑制剤の開発が重要となっている。

新規がん転移抑制剤の提案

当研究室では、分子シミュレーションを用いて、uPAとuPAR間の特異的相互作用を解析している。*2

 結合に重要であるuPAのアミノ酸を基に、新規がん転移抑制剤の提案をしたいと考えている。

がん転移抑制剤の特性解析

がん転移抑制剤:キメラタンパク質の機能

 ウロキナーゼ(u-PA)とがん細胞表面に存在するウロキナーゼのレセプター(u-PAR)との特異的な結合により、がん転移が開始する。従って、u-PA よりも先に、u-PAR に結合するタンパク質を開発できれば、この特異的な結合を阻害し、がん転移を抑制できる。

 共同研究者の小林らは、u-PA のレセプター結合部位(ATF)とがん転移抑制のための 活性基(ビクニンのHI-8部位)を結合させたキメラ蛋白質*3をがん転移抑制剤として開発している。

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より高性能ながん転移抑制剤の提案

 本研究室では、このキメラタンパク質の特性を分子シミュレーションを用い解析している。 *4 *5

 その結果から、キメラタンパク質にどのようなアミノ酸置換を行えば、より強く u-PAR と結合し、また、より強いがん転移抑制効果を持つキメラタンパク質ができるかを明らかにし、より高性能ながん転移抑制剤の提案に結びつけたいと考えている。

 

 がん転移抑制剤の特性解析及びがん浸潤機構の解析は、奈良県立医科大学との共同研究です。


*1 “細胞シミュレーションによる癌浸潤機構の解析”、永瀬圭良、小林浩、永田昇、山本史雄、夏目貴行、出立兼一、塚本貴志、栗田典之、J. Comput. Aided Chem.、2007、8、75-84.
*2 “Effect of amino-acid mutation on specific interactions between urokinase-type plasminogen activator and its receptor: ab initio molecular orbital calculations”,S. Tsuji, T. Kasumi, K. Nagase, E. Yoshikawa, H. Kobayashi, N. Kurita, Mol. Graph. Model., 2011, 29, 975-984.
*3 小林浩 他、国際特許、「癌転移抑制剤」、出願番号:特願平9-525071.
*4 “癌転移抑制剤の電子状態計算(1):生理的物質ビクニンの化学反応特性解析”、杉浦史卓、津村直哉、小林浩、栗田典之、J. Comput. Aided Chem.、2004、5、62-69.
*5 “癌転移抑制剤の電子状態計算(2):ウロキナーゼの化学反応特性解析”、津村直哉、杉浦史卓、小林浩、栗田典之、J. Comput. Aided Chem.、2004、5、70-76.
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